咬み合わせと顎関節症の治療を専門医している歯科医師です。

anyanyannno さんリクエストをいただきありがとうございます。

筋肉が重要ということでお互いに共感しあうことができて幸せです。

筋肉が重要という概念は1970年代に北欧の歯科関係の研究者から提唱されだした考え方ですが、それまでは顎関節が大切だという考え方が主流でした。

いまだに世界中の歯科医がこの考え方から脱却できていないのですが、顎関節を中心とした考え方では顎関節症そのものを治すことができないし、筋肉に発生した筋原性の不快症状を解決することもできません。

歯科界ではいまだに顎関節症をすみやかに治療することができない理由はここにあります。

北欧で生まれた筋肉重視の考え方は北米に飛び火して、1970年代にシアトルの開業医で研究者でもあったバーナード・ジャンケルソンに受け継がれました。そこで筋肉を重視する治療法が開発されました。

しかしこの考え方は米国では受け入れられずに激しいバッシングに会います。それはこの考え方を継承したご子息にも及び、残念ながら全米に普及するまでには至りませんでした。米国では顎関節を中心よした咬合理論が一世を風靡していましたので強い反発を受けたのです。

幸いにも私は親子二代にわたって厚い知遇を受けくることができました。私がこの考え方にいまだに固執する理由は、考え方の合理性だけではなく、実際に予知性のある治療効果が得られているからです。

楽器の世界で吹奏人口が急激に増え顎関節症も増えであろうという予測がることを初めて知り驚いています。

ご説明のごとく重い楽器を左右非対称な姿勢で演奏するために力の弱い女子が上手く吹奏しようとすれば、体の態勢を崩して顎関節症を発症しやすい下地がそうということはその通りだと思います。

さらに吹奏のために厚みのあるマウスピースを噛んで繊細なコントロールをしようとすれば、下顎の位置がずれて顎関節症を誘発する要因になるというご指摘も事実だと思います。

基本的に座位で演奏するために筋肉を固めていることが多いとのことですが、そうすれば特定の部位の筋肉に循環障害を生じ、筋原性の疼痛で苦しんでいる方が多いということも納得がいきます。

筋肉の重度の障害は同時に自律神経の失調をまねき、現代の医学では診断も治療も容易ではない不可解な全身症状に苦しめられるようになることが少なくありません。これらの症候群はTMDと呼ばれていますが、原因についても治療法もいまだに統一されていません。

吹奏楽の世界では病理的に危険な条件が多数存在することを初めて知りましたが、今後この世界で活躍されている方の治療に際しては職業的な背景に配慮しながら対応することができるようになったと感謝しています。

欧米では顎関節症は”TMD”(Temporo-Mandibular Disorder)とう症候群のひとつであるといわれています。様々な筋原性の疼痛と自律神経系の不調、精神障害などを一連の疾患の一つと捉えられています。

顎関節症をはじめとして、しつこい肩こりや首筋の痛み、緊張性の頭痛、めまいや動悸、息切れ、睡眠障害などの自律神経失調症の症状、慢性的な倦怠感、集中力の低下、無気力などの気分障害などはTMDという症候群に含まれます。

TMD の原因についてはまだ定説はありません。不快症状の原因は、咬合に由来するという説とストレスが原因であるという説に大きく分かれていて、未だに論争中です。

私はTMDの症状の本質は筋肉の障害であり、その原因は筋骨格性障害に由来すると考えて治療をしています。

人間は関節で結ばれた複数の骨格で構成されていますが、筋肉は関節を介して結ばれている二つの骨格のあいだに介在して骨格を動かしています。筋肉は筋紡錘という繊細な受容器で収縮の状態をモニターしながら骨格の移動量を微妙にコントロールします。

筋肉が適正に機能するためには骨格の移動範囲には一定の制約があり、その範囲内でなければ筋肉は適正な機能を発揮できません。

つまり骨格同志の位置関係が適正でなければそれを動かしている骨格筋は正常な機能を発揮できないということであり、場合によっては機能不全に陥ることもあるということです。

筋の障害は筋骨格性障害に由来するという治療概念を口腔領域に適用することを提唱したのは、前述のバーナード・ジャンケルソンでした。ニューロマスキュ ラー理論(Neuromuscular concept)といわれている学説ですが、この学説を中心に世界中の臨床医が集まる国際学会(ICCMO)があり、40年来継続して意見交換をしていま す。

長くなりましたので結論から先に述べますと、下顎という頭蓋とは独立した骨格の位置(下顎位)が狂うと、下顎に付着している無数の筋肉の位置関係も変化し て緊張し、血行障害をおこして硬直状態(凝り)になります。それが不快感を感じるようになる原因であるということです。不自然な姿勢を長く続けることもこ れと同じ状況を作り出します。

下顎と頭蓋の間には咀嚼筋という強大な筋肉もありますし、下顎と体躯との間には頚部や肩、胸部などと繫がっている無数の筋肉があります。下顎の位置(下顎 位)が狂うと下顎に付着した複数の筋肉が緊張して筋肉の硬直(凝りなど)へと発展し、それがさらに周辺の脈管や神経を圧迫(絞扼)して二次的な症状を引き 起こします。

二次的な症状としては手足のしびれなどがあります。

そして下顎の頭蓋にたいする位置関係(下顎位)を狂わせる最大の原因は上下の歯の咬み合わせであるということも重大な事実です。

そのために歯の咬み合わせが、歯科治療などで僅かに狂っただけでも肩こりなどの筋肉障害が起きます。

TMD の患者さんの下顎位を精密に調べてみるとズレを発見することができます。そのズレをオーソシス(マウスピースの一種)で修正することでほとんどの場合、筋肉障害を解消することができます。

この治療の予知性は非常に高いのですが、治療効果を確実なものにするためには正確な下顎位のコントロールが必用です。

3年前にまとめた66名のTMDの患者さんの治療後のデータでは、症状の辛さを表す疼痛指数の改善率(辛さが減少した割合)は、関節痛(42%)、開口時 痛(41%)、肩こり(33%)、緊張性頭痛(38%)、顔面の筋肉痛(52%)、めまい(44%)、動悸(46%)などでした。

この種の疾患の治療の目標は緊張した筋肉をリラクゼーションすることです。そのためには様々な分野の専門家と共同して筋肉へのアプローチを行うことはとても有効なことだと思います。

しかし残念ながら日本ではそのような体制は一部の特殊な場合を除いてほとんど一般化していないのが現状ですが、将来の課題だと思います。

回答が遅くなりましたことを深くお詫び申し上げます。

さらに詳しい情報をお知りになりたい場合には下記のホームページをご参照ください。
東京咬み合わせ治療研究所 www.kami-awase.net